ミツル醤油の城さんの奮闘記が100号に到達

2010年6月の第1号から7年以上にわたって書き続けてくれています。この100号をご覧いただけると分かりますが、城さんは失敗談を赤裸々に綴っています。

「大豆投入の初期段階でこれはダメだ‥と、思っていましたが身内に「大丈夫と」見栄を切っていたので引き返せませんでした。笑」なんて部分は、その状況が想像できてしまって、どうしてもニヤニヤしてしまいます。

でも、他の蔵人は城さんをうらやましいと思うはず。

ここまで大胆に試行錯誤できるのは稀です。毎年同じ品質のものをつくるのが暗黙の前提になっているのかもしれません。その中で少しずつ品質をあげる努力はすれど、それでも、大胆な製法変更には躊躇してしまうのも当然のことだと思います。

でも、城さんの手掛ける「生成り、」は毎年仕込み年度が商品名に入ります。毎年違うことが前提になっている醤油で、どんどん進化している醤油です。「生成り、」のファンも、今年はどんな出来になるのか楽しみにこの奮闘記をご覧になっているはず。

2017仕込み
http://www.s-shoyu.com/jo/100.htm

大豆、小麦、食塩だけの醤油が本当によい醤油か?

大豆、小麦、食塩は醤油の基本となる原料ですが、
それ以外のものが入っている醤油はよくない!と、
そんな声を耳にすることがあります。

脱脂加工大豆やアルコール、そしてアミノ酸液や甘味料などが
名指しをされることが多いですが、それらが含まれているものは
偽物の醤油だという過激な意見も。

でも、ちょっとこれは、さすがに言いすぎだと感じています。



確かに、戦後以降の物資の不足している時期など、
原料コストを安くするためにアミノ酸液やそれに類する
ものを使っていたこともあったと思います。

ただ、現代では製造技術も大きく発達しています。
原材料も比較的容易に調達できるようになっていて、
大豆、小麦、塩だけの醤油は昔に比べれば容易につくれます。

しっかりとおいしい醤油となれば一筋縄ではいきませんが、
原材料表示がシンプルな醤油であれば安価に調達できます。

そのため、コスト重視だけの目的でアミノ酸液を使っている
つくり手は少ないように感じています。
むしろ、添加物って意外に高いですよと言われると思います。



九州に代表される甘い醤油。
アミノ酸液と甘味料を併用している場合が多いと思いますが、
地元のスーパーに行くとこのタイプの醤油が主役になっていて、
その土地で育った方にとってはこの味が醤油だと表現されます。

蔵元ごとに甘みの加減が違うので、蔵元の数だけ味わいがあって、
代々その味で育ってきたという家庭があるわけです。

その意味で、一概にアミノ酸液をつかった醤油を
否定することはできないと感じています。

大切にしたいのは、
生産者がどのような考えで醤油造りをしているか?
アミノ酸液を使うなら何故使っているのか?
単純に原料表示のみで良い悪いを判別したくはないですね。

10月1日はしょうゆの日でした

プレシャスサンデー

10月1日はしょうゆの日でした。日本酒の日でもあるそうですね。発酵や醸造には適した日なのかもしれないですね。しょうゆ情報センターによると、10月は収穫した農作物を貯蔵・加工する季節であること、10月が干支(えと)で10番目の「酉(とり)」にあたる月であることから、10月1日を醤油の日に定めているとしています。酉は酒にも醤にも使われていますよね。

しょうゆ情報センター
https://www.soysauce.or.jp/about/day.html

プレシャスサンデー

ということで、TBSラジオの「笹川友里 プレシャスサンデー」に呼んでいただきました。スタジオに6種類の醤油を持ち込ませていただき、笹川さんに味比べをしていただいたのですが、さすがはアナウンサー。それぞれの違いを上手に表現いただきました。

笹川友里 プレシャスサンデー
https://www.tbsradio.jp/ps/

ヤマサ醤油のポスター(杉浦非水)

ヤマサ醤油の銚子工場にとてもきれいなポスターが展示されていました。昔のものであることはすぐに分かるけど、ぜんぜん古臭くなくて、きれいだなぁ〜ってしばらく眺めていました。

杉村非水。近代のグラフィックデザイナーとして有名な方が手掛けていたのですね。

杉浦非水

杉浦非水

杉浦非水

杉浦非水

杉浦非水

醤油の諸味を搾る

醤油の諸味を搾る

醤油を搾る前の諸味。日常生活で目にする機会は少ないと思いますが、ご自宅で醤油づくりをしたり、醤油蔵に見学に行った時など購入できたりすると思います。

これを搾って醤油になるわけで、そのまま食べてもおいしいのはもちろんです。きゅうりにつけたり、ごはんにのせたり。

醤油の諸味を搾る

コーヒーフィルターがあればご家庭でも簡単に醤油を搾ることができます。ステンレス製のものが使い勝手がよく搾りやすいと思います。諸味をいれると自身の重さでぽたぽた滴ってくるはずです。

醤油の諸味を搾る

しばらくすると自重での滴りは止まるので、上から押してさらに搾ります。

ラップを一枚おいて、その上からビニール袋に水を入れたものを乗せると密着度も良く適度に重さをかけることができます。ただ、醤油蔵で搾るように最後まで搾り切ることはできないので、適度なところでやめて残った諸味を活用されるのがよいと思います。

まだ十分に水分とうま味が残っているので、ぬか漬けのように野菜につけたりお料理使ったりと。

ちくわの弾力=足がある

ヤマサちくわ

ちくわの歯ごたえを業界用語で「足(あし)」と表現するそうです。弾力があることを「足がある」「足がいい」と。そして、よい足をだすには、魚の身を「する」工程が大切。するとは混ぜることなのですが、その加減が職人の腕の見せ所だと佐藤善彦常務はいいます。

「することで魚の身の繊維を伸ばして、その隙間に空気が入ることで弾力が生まれます。すり工程の途中で塩を加えるのですが、そこから5分間が勝負。温度の管理か、塩分か、硬さか、なにをどれだけ調整すべきかを見極めないといけないですから」と。

ヤマサちくわ

普通のちくわと上級のちくわの食べ比べをさせていただくと、最初に噛んだ瞬間にすぐわかります。もちろん、元々の身のグレードも関わってきますが、心地よい弾力と魚のうま味の広がり方。確かに違うと納得します。

適した足の加減には、魚の種類毎に適したすり方はあるはずですし、春と冬では魚の状態も違うはず。その時々で異なる素材に応じた調整というのが、人が関わることだと感じました。

醤油と塩分の取りすぎ?

適度な塩味はおいしい
食塩は人類が最も古くから使い始めた調味料です。塩漬けにすることで食べ物を長期保存することができ、その起源は縄文時代くらいまで遡るのですが、醤油も穀物の塩漬けととらえて穀醤がルーツという見方もできます。

また、醤油をつくる過程でも塩があることは重要です。腐敗菌の活動をおさえているのが塩であり、そのおかげで半年以上もの長期間にわたる熟成発酵ができるのです。

また、食塩は人体にとって不可欠な成分でもあります。血液の浸透圧を保つことなど生命維持に関わる多くの役割を担っています。ただ、何よりも人がおいしいと感じるものには適度な塩味があると思います。子供のころにご飯に醤油をかけすぎて怒られた経験もあるのですが、塩味はおいしさの重要な要素だと感じています。

醤油と塩分

醤油は少量で満足感
醤油の塩分濃度は約16%です。健康には減塩だという流れの中で、塩分の摂り過ぎを懸念される方もいらっしゃいます。厚生労働省のホームページには1日当たりの塩分摂取量の目標値は男性で8g(女性7g)と表記されていますが、8gの食塩を仮に醤油だけで取ろうとすると50mlになります。

お刺身を食べる時に小皿注がれる醤油が5ml程度なので、小皿に残った醤油を飲み干しても食塩換算で1gにも満たない計算になります。醤油には塩味の他にうま味や甘味が溶け込んでいるので、食塩をそのままなめるよりも少ない量で満足感を得られるとも言えると思います。

吸収される塩分と排出される塩分
そして、より重要な視点は口にする食塩の量よりも、摂取した塩分と排出された塩分の差であるはずです。ここで塩分排出を助けてくれるのがカリウムなどのミネラルで、みそ汁の具材をイメージすると興味深いです。

昆布・わかめなどの海藻類、じゃがいも・里芋などのいも類、ホウレンソウなどの野菜類など。体にとって必要な塩分は吸収して不要分は排出させることを促進させます。昔からの日本人が食していた組合せはとても理にかなっていると実感しますね。

そうめんのつゆの比率

愛知県碧南市の小笠原味淋の小笠原さんは「めんつゆは、だし:みりん:醤油=4:1:1で絶品!」と声を大にして主張されます。「特にうちの妻がつくるめんつゆは相当にレベルが高いですよ」と言われるので、それならばと、これからそうめんの時期を迎えるにあたり、複数の醤油で試食をしてみることにしました。

そうめんつゆの比率

白、淡口、濃口、再仕込み、溜の5種類の醤油に対して、昆布と鰹のあわせだしを用意して、みりんを火にかけてアルコールを飛ばしだしと醤油を加えます。比率は、だし:みりん:醤油=4:1:1です。

最初の予想としては、濃口醤油は無難に平均的な味わいになってくれて、そこを中心に白・淡口はだしの風味を活かせて、溜は濃厚なタイプになるのではないかと思っていました。

そうめんつゆの比率

ただ、この予想は大きく覆されました。まずは白醤油。みりんに甘みがあるので、白醤油とあわせることでさらに甘さが増してくる印象。これはちょっと違うかも・・・。

続いて淡口。だしの感じがもっと前面にでてくるかと思っていましたが、みりんの甘さが強いように感じて、かけうどんのつゆとかであればすごくあいそう。ただ、そうめんのつゆと考えると、これも違う印象でした。

そうめんつゆの比率

濃口醤油。だいぶバランスが取れてきた印象なのですが、醤油の感じも甘さの感じも強く感じ、とにかく全体的に強い感じがします。「4:1:1の比率本当かなぁ?」と心配になりつつ、次は再仕込み。あれ、かなりアリかも。だしと甘みと醤油のうま味がよいバランスになってきました。

次の溜になるとさらにアリで、意外なことに溜が一番よかったです。ただ、全体的にもう一歩何かが変わればさらにおいしくなる気がして、何が足りないのだろうと考えていると、出来立ての温かいまま味を比べていたことに気づき、いったん冷ましてみることに。

そうめんつゆの比率

それぞれが冷えた後に改めて比べてみると、印象が確かに変わります。温かい時は全体的にみりんの甘さが前面に出てきていたのですが、その甘さが必要以上にでてこずに全体がしっかりとまとまってきました。淡口も濃口も温かい時と比べるとおいしくなってる。でも、依然として溜がおいしいことは変わりません。

よくよく考えてみると、小笠原さんの愛知県は溜の主産地でもあって、刺身には溜が落ち着くとも話されていました。確かに溜など濃いめの醤油だと「4:1:1」がちょうどよい印象です。

では、濃口醤油を活かせる比率はどうだろうと、みりんの量を減らして、だし:みりん:醤油=4:0.5:1にしてみると明らかに醤油のしょっぱさが強い。この路線ではないなと、みりん:醤油=1:1を固定してだしの量を増やしていくと、5:1:1にしたときにかなりしっくりときました。

そうめんつゆの比率

溜をベースにするなら、だし:みりん:醤油=4:1:1。濃口醤油なら5:1:1が現時点のちょうどよい比率になりました。ただ、継続してさらによい比率を探っていきたいと思います。

だしをとる手間を乗り越えれば、簡単においしいめんつゆが簡単にできます。しっかりと冷やすとよりおいしく感じるはずです!

醤油の香りと酵母菌

醤油の香り

香りをつくる主人公は酵母菌

焼き鳥や焼とうもろこしなどの、あのこうばしい香り。醤油中の糖分とアミノ酸が反応(アミノカルボニル反応)してつくりだされる成分です。これに代表される香りは醤油の魅力の一つだと感じています。

その香り成分は300種類以上が含まれているといわれています。厳密なところは解明しきれていないとも言われていますが、その主役は微生物。中でも酵母菌が大きな役割を担ってくれています。花や果物やコーヒーなどの成分をたくさんつくってくれています。

主発酵酵母と後熟酵母

酵母菌は主発酵酵母と後熟酵母とに分けられます。乳酸菌が活躍した後に動き始めるのが主発酵酵母で主にアルコール発酵をしながら、醤油特有の香り成分であるフラノン化合物をつくり、麹菌や乳酸菌がつくった有機酸を元にエステル類をつくりだします。

後熟酵母は小麦の皮の成分などが炒られたり麹菌が作用したりなどを繰り返して、最後は後熟酵母がはたらいて醤油に重厚感を与える香りをつくりだします。熟成香や燻製のようなかおりとも表現されます。

[醤油の知識]:醤油の香り

えそ醤油

連続で訪問をさせていただいた、イチビキさんとヤマサ醤油さん。関連がなさそうで、じつはあるのです。ちくわの原料となるのはグチ、エソ、ハモの魚です。身の部分と頭や骨などに分けられて、ちくわに使われない部分がでてくるのですが、この素材を使った魚醤づくりのプロジェクトが、イチビキさんとの共同開発として進んでいるのです。

えそ醤油

実は、ヤマサちくわの佐藤常務とイチビキの中村社長は同級生。同窓会の席での何気ない会話がきっかけだったとか。

イチビキさんの研究開発部では国内、そして海外の魚醤を集めて味比べをしたそうです。最初の感想は、くさい。魚醤といえば独特の臭いが特徴ともされますが、とにかく、くさい。ここをなんとかできないかと感じたそうです。

一般的な魚醤は塩漬けです。魚の内臓にある酵素によって魚のタンパク質がうま味成分のアミノさんに分解されることでつくられます。つまりは発酵というより分解による作用なのですが、ここに醤油づくりで培ってきた発酵の技術を加えることができないかという挑戦です。

えそ醤油

最初はやはり失敗つづき。くさくなってしまい、泣く泣く捨てる日々。改善の第一歩は鮮度だったそうです。当初は、さばいた魚をヤマサちくわさんからイチビキさんに運んで塩漬けにしていたそうですが、ヤマサちくわさんでさばいた時点で塩漬けにする。素材が新鮮だとくさくなる割合がぐっと少なくなるそうです。そこに醤油の麹を加えて乳酸菌、酵母菌も加えて発酵をさせる工夫を積み上げてきたそうです。

一般的に発酵しない溜醤油を発酵させているイチビキさんの技術。それがまさに活用されているわけです。発酵過程の魚醤の諸味を見せていただきましたが、おどろくほどにいやなにおいが皆無で、これ本当に魚醤ですか?と聞いてしまうほど。魚醤はくさいという思い込みがなくなってしまうような味わいでした。